
HUMAN SCIENCE
圧倒的情報密度で迫る、生命知能の物語
本講座は、重力、流体力学、伝達遅延、そしてノイズといった、生命を縛り付ける**「物理的制約(不自由)」を、知性が立ち上がるための不可欠な条件として再定義する、新しい生命知能論(Human Science)。
これまで、生命の「不完全さ」として片付けられてきた現象――例えば、脳の配線の偏り、左右の非対称性、情報の損失、信号の遅れ――は、実は過酷な物理世界を生き抜くために生命が編み出した「計算のハック」であった。著者が独自に導き出した数理モデル群(生存包絡線モデル、因果境界層、17msの統合窓など)は、これらの不自由がいかにして「私」という自己主体感や、洗練された身体制御を彫り出してきたかを山木自身が進めている研究プロジェクトから鮮やかに証明する。
物語は、宇宙の定数に縛られた「物質としての生命」から始まり、義体化や量子的な実在論を通じて、自ら現実を観測し確定させる「世界制作の主体」へと至る。そして、その自己参照的な予測のループが崩壊する「死」の定義をもって完結する。
これは、物理の鉄鎖に繋がれた存在がいかにして「自由」を計算し、存在の手触り(Flesh)を獲得していくのかを巡る、科学と哲学が縦横無尽に駆け巡る壮大なストーリー。
小手先のノウハウも、型通りのトレーニング方法も存在しない。 そんな浅い話に、今や何の意味もないからだ。
本講座が提供するのは、ひたすら生命とヒトの根幹に迫り、「私」という現象の正体を暴き出すという、かつてない知の経験である。
不自由という檻の中で、いかにして「自由」という光、すなわち生命の火が灯るのか。その軌跡を辿り直すとき、あなたの「身体」と「世界」の見え方は、もはや後戻りできないほどに変容している。
進化生物学、計算機科学、認知神経科学、哲学を横断し私自身がたどり着いた「ヒトとは何か」の臨界点を共有します。
【第1部:宿命】 ―― 物理法則が描いた「生命の設計図」
第1回:重力の檻
巨大な知能を規定する「1g」の必然 生命は地球の重力から逃れられない。微生物は重力を無視できるが、サイズが大きくなるほど重力と「強結合」し、1gから外れると生存能力は急落する。我々の知能がこの形態であるのは、宇宙の定数に対する「物理的妥協」の結果であることを、導き出した独自の生存モデル(GMVM)から読み解く。
第2回: 神経配線の黄金律
脳が選んだ「最短・最速」の幾何学 脳の配線図は、エネルギーと信号遅延を天秤にかけた物理学的必然である。線虫からハエへとスケールが上がる際、脳が情報の流れを「一方通行」へと偏らせるのは、都市が渋滞を避けるために一方通行を増やすのと同じ合理性だ。脳もまた「距離」という物理制約を数理的にハックしているのである。
第3回:交差支配の必然
右脳が左を操る「流体力学的」理由 なぜ脳は反対側の体を制御するのか。流体力学的モデルを解析すると、反対側の鰭を動かす「交差支配」の方が、圧倒的に低コストで姿勢を立て直せることが判明した。スポーツで見られる「とっさの回避行動」の背後には、数億年前の魚類が水中を生き抜くために選んだ力学的最適解が息づいている。
【第2部:戦略】 檻の中で、 欠陥を「武器」に変える
第4回:因果の壁
認知の安定性を決める「0.1秒」の予算管理 「結合強度 × 時間の粒度 ≈ 0.1」という絶対的な定数が、計算の限界を支配している。高精細な映像が処理落ちするように、知能もまた、この限られた「時間予算」を超えた瞬間に崩壊する。思考の安定性は、このシビアな予算管理の上に成り立っていることを示す。
第5回:17ミリ秒の呪縛
意識を繋ぎ止める「絶対時間」 左右の脳がリズムを合わせるには、「17ms」という物理的な壁がある。この絶対時間が、バラバラな神経活動を一つの「今」という物語に編み上げている。私たちの「現在」の解像度は、この物理的な窓によって規定されている。
第6回:世界の入れ子構造
左右の脳が「違う景色」を見る理由 なぜ脳は左右非対称なのか。それは世界が「全体」と「細部」の二重構造を持つからだ。進化シミュレーションを通じて、この構造に適応するために脳が「半球特化」を必然的に選択することを示した。私たちは非対称な脳によって、世界を重層的に理解する能力を手に入れた。
第7回:神経伝達遅延が生む調和
感度を最大化する「裏打ち」の数理 遅延はバグではない。信号をあえて周期の「4分の1」だけ遅らせる構造において、情報感度は最大化される。生命はあえて「ズレ」を作ることで、外界のわずかな違和感を捉える超高感度センサーを手に入れた。
【第3部:創発】 ノイズの海に浮かぶ「私」という秩序
第8回:スケール不変な知能
どんな環境でも「正しく」驚く力 脳は、ささやき声も叫び声も、同じ「変化の比率」として認識する。この対数的なエラー検知は、脳の非対称な構造から創発される数学的奇跡。これにより、絶対的なスケールに惑わされず、激変する現実世界において常に一貫した反応を示すことが可能になる。
第9回:自己主体感はどこから生まれるか
情報の「格差」が「私」の境界を引く 自分が自分であるという感覚は、単なる予測精度から生まれるのではない。脳内に「運動情報の秘密」にアクセスできる部分とできない部分があるという「情報の非対称性」こそが、鏡の中の自分を「私」だと確信させる数理的な根拠であることを明らかにした。
第10回:忘却の計算論
「忘却」という名の安定装置 物理的なエネルギー放出(散逸)を計算に取り入れると、システムは驚異的なノイズ耐性を得る。あえて情報を不可逆な流れの中に置くことで、脳は嵐の中でも一貫した予測を維持できる。ノイズという嵐を生き抜くために、生物は何かを忘れていく。
【第4部:地平】 存在の変容と「世界制作」の主体へ
第11回:運動制御の本質
達人のしなやかさは「ゆらぎ」の中に宿る 熟練した職人の動きは、固定ではなく「多様な解決策」を遊びとして保持することで実現される。タスクに関係ない部分は自由に動かし、必要な時だけ調整する。この「柔軟な制御(FCF)」こそが、生命だけが持つ「しなやかさ」の正体である。
第12回:ポストヒューマン・フレッシュ
技術と溶け合う「自己触知」 義足や脳インターフェースは単なる道具ではない。それらは生命が自分自身に触れ続ける「自己触知」の構造を書き換え、新たな「肉体(Flesh)」として再編される。技術と生命が溶け合う場所で、私たちの「存在の手触り」はどう変容していくのか。
第13回:量子現象としての「行動」
予測・実行・修正の重なり 人間の行動は「予測→実行→修正」という線形な順序ではない。独自の演算モデル(演算子モデル)を用いれば、これらが同時並行で存在する「時間の重なり(量子的な重ね合わせ)」として記述できる。私たちの「自由」は、この未解決な可能性を保持し続ける力にある。
第14回:終焉
測定が「世界」を創り出し、還る場所 知能とは、量子的な測定を通じて一つの現実を確定させる「世界制作」の主体である。しかし、その自己参照的な予測構造がノイズで崩壊(ターミナル・ブレイクダウン)する時、システムは「死」という不可逆な限界を迎える。物理的な「檻」から始まった旅は、知能が自ら世界を誕生させ、そして数理の海へと還っていく終焉の定義をもって完結する。
※受講方式: オンラインによる対面+課題提出 全30時間
受講料: ¥132,000
受講日程: 受講者と調整
